1年越しの約束・セミ食レビュー(後編)

前編はこちらhttps://www.garamu.work/entry/2019/09/11/022848

日本において食虫の文化は一部地域に受け継がれているという。ほぼ時としてゲテモノと称される昆虫食だが、将来的に人口増加に伴う食糧危機を救ってくれるかもしれない。しかし、人類が昆虫食を一般的な食糧にするには超えなければいけないハードルが多数ある。

  • 数を捕まえるためのコストパフォーマンスが非常に悪い 
  • 昆虫(セミ)には旬があるので、常時手に入る食材ではない
  • 環境には優しいが人間の精神にはヘビーな代物である(主にビジュアル面)

我々は捕まえるところから行っているので罪悪感がさらにプラスされる。

セミ=食糧という考えにシフトするには、セミは空を飛び夏を謳歌している生き物だと思っていた38年間の人生を否定しなければならない。しかし、有事に備え訓練しておくことは新たな価値観の目覚めになると言っても過言ではないだろう。

セミの画像ががっつりあります。苦手な方は引き戻してください。

セミを会社へ持ち込む

約束の日、私は保冷剤に包んだセミを会社まで持参した。うっかり誰かが間違えて開けたりしないように周囲の人たちにはセミが冷凍庫に入っていますので宜しくお願いします。」と声かけは怠らなかった。

 

皆一様にドン引きであったが、そんなのはセミを食べようと決心した時から覚悟はしていた。

セミを持ち込んだら爆笑される

就業後、定時ダッシュで中華屋に向かう。先に着いた私と友人でお母さんに「約束のセミを持ってきました」とセミを渡した瞬間

お母さんは爆笑し、厨房の中のスタッフやシェフに「ツーリョ!!&#%&’(&$#)$#%$%&’!!」と中国語で伝達していた。

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テンションぶち上げなお母さん

ニュアンス的には「マジでセミ持ってきたんですけど、ウケるwwwww」といったところか。シェフもスタッフもめちゃめちゃ笑っている。

しばらく厨房が湧いていた。

袋から凍ったセミを取り出し、状態を確認するシェフが「あなたに最高のセミを食べさせてあげますよ。」と言わんばかりに親指を立てた。

 

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鮮度には自信あり

 

夫と友人夫妻の到着を待ってから、料理してもらうことにし、私たちは先に初めておくことにした。この中華屋さんは突き出しで小皿の1品をいつも出してくれる。この日は春雨の炒め物であった。

 

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キクラゲと空芯菜の炒め物めっちゃ美味しい 

 

この中華屋さんのいいところは中華でありがちな大皿料理ではなく、手頃な価格で小皿提供してくれるところだ。あれもこれも食べたい女子には嬉しい。

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インスタを全く意識しない無骨な餃子。

皮から手作りの餃子なんですって

 

そうこうしているうちに夫と友人夫妻合流し、お母さんが「ツーリョ!」と言いながら調理されたセミを持ってきてくれた

 

いよいよ実食

出てきたのは、セミの姿を失わないままの唐揚げである。

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下に轢かれている白いのは春雨を油で揚げたもの 

ビジュアルのインパクトは凄まじく「うわぁぁ。これを今から食べるのか・・・。」

と躊躇していたが、元から昆虫食に興味のあった友人と夫、夫の友人の3人は何のためらいもなく、セミをつまみ上げ口の中に放り込んだ。

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目が合っちゃう…

完全に出遅れる私と友人の奥さん

恐々、口の中に入れるも「噛んでいい?ねぇ、噛んでいい?」と先に行ってしまった3人に安全を確認する。

 

「大丈夫!美味しいよ!!」という夫

違う。大丈夫とかそういう事じゃない。私は今セミを食べようとしているのだ。

人間というのは、味をなんとなく想像で補っている部分があると思う。料理を見た瞬間今まで味わった食材の食感や風味などを脳が認識し「これは食べたことがあるから安全な食べものだ」と認識するからだ。

しかし、38年生きてきてセミは初めて食べる食材である。すべての情報を頭が認識するのに時間がかかる。

 

おっかなびっくり噛む「ん?・・・あぁ〜あーなるほどなるほど。」

にんにくとネギ、唐辛子、ホワジャオ(花山椒)で炒められたセミは、セブンイレブンあたりで「マーラースナック(セミ)」として売られていても何ら違和感がないほどのおつまみ系おやつの立ち位置。

 

食感は、海老の殻を食べているような感じだ
味は正直、シェフの味付けが上手すぎてセミ本来の味は全くわからなかった。
有事の際にこれが出てきたらちょっと1杯やってしまう味である。ビールが間違いなく進む味付け。ちょっとシェフを呼んでくださいと言いたくなるような上手に味付けされたセミであった。

 

プロローグ

今回、友人はセミを食べて非常に満足したらしく、もっとハードルが高いものはないかと次回は「雀」を食べようと提案があった。

 

友人奥さんは「昔、バンジージャンプがどうしても飛べなくて、自分一人だけ諦めてしまった。その時の悔しさがあったからか今回勇気を出して良かった。私でもやれば出来きる!ってすごい充実感がある。今ならバンジージャンプが跳べる気がする」と、セミのお陰で過去の自分と対峙し、心の突っ掛かりが取れたとのことで非常に達成感を感じる出来事だったという。

 

また、快く料理してくれた中国人シェフもまさか日本でセミを料理するとは思わなかっただろう。

 

まとめ

まさか、自分がセミを食べることになるとは全く思ってもみなかったが、セミを捕まえ食べることで様々な経験が得られた。

 

食虫文化の多様性は地域が違えど、貴重なタンパク源である昆虫(セミ)を美味しく食べる為に発達したものだろう。

しかし、今でこそ食虫会の中では割とメジャーなセミだが日本の食虫文化では伝統的な食材になれなかった理由はやはり、旬の食材であるという事と捕まえるのが面倒だからだろうか?

 

命を頂くという事を捕まえる所から成し遂げた事で、味付けの大事さと一緒に食べてくれる仲間は大事だと感じた。